小ネタ・7 | |
裏遠坂神社。 それは、遠坂神社の反対側にあるものの、入り口そのものが薄暗く、しかも一見道には見えないため、知る人ぞ知る場所となっている。 そんな神社の巫女には、凛から桜が任命されていた。 そして、バイトとして、慎二と士郎が手伝いをしていた。 「まったく、どうして僕がこんなところでバイトしなきゃいけないのさ」 遠坂がどうしてもって言ってたくせに、あいつ全然ここに来ないしな、などと慎二がぶつぶついいながらも、掃除をしている。サボりながらではあるが、作業をしてしまうのは、やはり遠坂が怖いのか、それとも、妹が怖いのか。 「まあまあ、いいじゃないか。バイト代でるんだしさ」 あと、ご飯もでるんだし、と一緒に掃除をしている士郎は、慎二にいつものようになだめるように話をしていた。 「ほんとに…、兄さんなんていらないのに、姉さんがどうしてもっていうから…」 「え?」 ぼそり、とつぶやかれた台詞に、慎二は背筋をぴん、と伸ばし、そして士郎は聞こえなかったために、聞き返してしまう。 「いえ。なんでも。お掃除終わったら、お茶にしましょう」 にこり、と別の場所の掃除をしていた桜が現れた。 「ああ、ありがとう」 士郎は普通ににこり、と笑って答える。けれど、慎二はかたかたと震えたままだ。 「慎二? どうしたんだ?」 「衛宮、どうしておまえは気がつかないんだっ」 「兄さん、余計なことはあまり言わないほうがいいですよ」 慎二の背中にすー、と何かが走る。掃除をして動いていたから熱いはずなのに、鳥肌がたっている。 「ああ、もう。せめて、一成もいれば僕だけこんな風に言われなくてすむのに…」 いや、一成がいたとて、桜の標的はあまりかわらないと思う、というのが外野の意見であろう。 ただ、人数が多い分意識は散らすことはできるかもしれない。 けれど、一成をここに呼ぶのは無理な話だった。彼の生家の事情ゆえ、お断りの連絡が来ていたからだ。 「まあ、二人だけどがんばろうよ。それに、ほら、ほかの…、そうだ。ランサーとかにお願いしてもいいかもしれないし」 表にアーチャーがいるんだから、問題ないだろうし…、といえば桜がダメです、ときっぱりと答えてくる。 「ここに勤める人は姉さんが決めているんです。ですから、私もライダーを泣く泣くあきらめて…」 あ、そうなのか、とライダーがいない理由をいまさらながらに士郎は納得する。 しかし、なんだって、そんなメンバにしているんだろうか… お茶をしてから、また掃除を再開する。ここにくる人はたいていは、絵馬を見に来る人だから、そのあたりを中心に恥ずかしくないようにする。 「そうだ…」 せっかくだから、絵馬もキレイにしようかな、と士郎は絵馬のかかっているところへと手を伸ばした。 それを慌てたように桜は先輩っ、と叫んでその手を両手で抱きしめる。 「桜…?」 「あ、あっ、このあたりはわたしの役目ですから、先輩と兄さんはあちらの方をお願いします…」 「けど、これ絵馬相当多いし…」 「いいんですっ」 その桜の強い口調に士郎は少し驚き、そして、そこまで言うならまあいいか、とじゃあっち掃除してるな、とほうきを持って移動した。 一人残った桜は、ほ、と息をつく。 これは、はっきり言って男性陣には見られてはいけない、と凛に言われているのだ。 だったら、雇わないで欲しい、と思ったこともあるのだが、少なくとも士郎と一緒にいる時間が増えることは桜にとっては悪いことではないので、あまり強く言うこともできなかった。 裏遠坂神社の収入源のこの絵馬。表は、普通だけど、裏には画像が貼り付けてあった。 それを拝観させることで収入を確保しているのだ。 表側に存在する遠坂神社では、凛やセイバーなど女性陣のものがほとんどだという。 けれど、この裏遠坂神社では、一部の期待にお答えして、男性陣がメインになっているのだ。 中には、ほどよくきわどいものなどもあり、本人に見られたら、そのまま壊されかねないという危険なものまでそろっている。 「ほんとに、姉さんたら、こんなのどこで手に入れたのかしら…」 綺麗にしながら桜はぽつ、と呟く。 まあ、人から譲り受けたり、撮らせたりしたものなのだろう、とはわかってはいるのだけれど、これだけあるのなら、まだ見せてもらっていないものもあるはずだ。 「今度、売上があっちよりよくなったら…、いろいろ見せてもらおう」 桜は、知らずに口元が笑ってしまっていた。 そんな桜を遠くから二人は眺めていた。 「なあ…」 「なんだよ」 「時々、桜のことわかんなくなるんだけどさ」 「時々ならいいじゃないか! 僕なんていつもアイツのことなんてわかんないよ!」 二人して、はあ、と軽く溜息をついてから、くすりと笑う。 謎の裏遠坂神社。意外なところでなぜか友情も育っている。 |
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小ネタその七。 桜管理の遠坂裏神社でバイトする士郎さんと慎二。 一成も入れた3人てかわいいですよね。 |